前回の絵描きとおしごとの適正についての話の続きです。
学生時代からいろんなパン屋でバイトしてました。
なんでイラストレーターの副業でパン屋なの?ってよく聞かれるので記録しておこうと思います。
最初に断っておくと、必ずしも絵描きにはパン屋業がおすすめというわけではないです。そんなわけあるまいて。
わたしにとってたまたまベストな位置にあったのがパン屋というだけで、似たような場所はいくらでもあると思いますし、
特に人間関係で悩みがちな人は、職場の人間と相性が合うかどうかを最優先したほうがいいと思われます。
率直に言ってしまうとパン屋のいいところは変な客が少ないところです。
これはわたしの旧職場 フランスパンが名物(店長はフランスで修行してからパン職人になった人)
近くで料理店やってる人たちはペイザンのフランスパンでご飯提供したい!!って大人買いしに来る
あと保育園とか幼稚園の給食も作って提供してるよ
田舎にポツンと佇んだパン屋なのも良かった。パンを求めて来るパン屋のファンしかいない。いい人しか来ない。当たりでした。
絵描きにとって一番ダメージなのはクレーマーに当たったショックでその日の作業がぜんぶできなくなるパターンなので…
その場所が好きでやってくるお客さんが多い職場は、不慮の精神攻撃受けてその日の作業量ノルマ全滅って事故が起こりにくいです。
(ただしこちらもできるだけファンの立場に近いほうがお客さんたちとうまく会話できる節はある)
それでも年に数回はクレーマーみたいなへんな客くるけど…逆に数回ってすごくない?!
加えて従業員さんもその店のファンなことが多いです。お店の気質にもよりますが、
心を込めて何かを作っている、ということが第三者から見てわかりやすいとか、おみやげに喜ばれそう、好きな人に教えてあげたい、みたいな分野に関わるお仕事は、経営者と相性合うかはさておき、従業員さんはすごくいい人な確率が高いです。パン屋に限った話じゃなく。優し過ぎて現世だと生き辛そうな方が非常に多かった…
---- 他にもこんなメリットがあったよ!という覚え書き ----
・わりとずっと忙しいから、手持ち無沙汰になることが少なかった
手が空いちゃうと早く帰りてえなってなるので…笑 やることがいっぱいあって、
でも一日のうちに「これだけやったら今日の作業は終わり」っていう区切りは目に見える形でちゃんとあって、
その上で適度にずっと忙しいのは肌に合ってました。
・ものを作る人の傍で働くとエネルギーをもらえる
コミケとかのクリエイターイベント行ったことあります…?作家さんたちのエネルギーが流れ込んできませんか。
あの会場と同じで、職人さんが毎日手作りでなにかを生み出してる現場は、それ相応のエネルギーに溢れています。
ただこのエネルギーが 儲けばかり意識してる現場だったりすると 逆に疲労したりする(そういう現場にも当たったことある)
いいお客さんたちに支えられて、良いものを生み出そうと努力して、調和を重んじてやってる現場は、正のエネルギーに溢れていますね…。
・身体に叩き込んで覚えてしまえば一日のルーティンは結構簡単
パンを焼きながら開店準備→昼あたりは混むので接客に集中→次の日の仕込み
みたいなルーティンでした(個店差があります)
「毎日パターン化されたことを繰り返すことで精神が安定する」生き物にとってはかなり有利に働くことが多いと思っています。
不慮の事態が少ないので、慣れてくるとパンをこねながら頭の中で物語の続きをこねたりすることもありました。わたしの作る物語の大半はパン屋で生まれたんですよ…笑
でもねぶっちゃけ、生産作業を一日繰り返してるのは疲れます。パン屋の良かったところは接客業も合間に挟まるところでした。(個店差があります!!)
パンを作ってるとき使う脳みそと接客してるとき使う脳みそは全然違う。スイッチの切り替えが必要になりますが、考えようによっては良い気分転換になるんですね…。
・絵を描くために使う脳みそをあんまり消費しない
これが一番良かった パンを作る作業も接客も、絵を描くときに消費する精神力と被らなかったんですよ わたしの中では
一時期デザインの仕事も経験したことあるんですが、8時間パソコンでデザイン業やってると家に帰ってから絵が描けなくなることが判明したので… 使う脳みそが一緒なんだろうなと(デザイン業しながら同人やってる人はすごいなと思う…友人たちには土日に原稿予定詰め込んで描いてる人が多い)
副業もちのいいところ、エネルギー配分を工夫できるところかもしれません。
----メリットばっかり並べてきましたが、デメリットもありました。もちろん。----
・体力がいる
パン屋だからね!!!!基本ずっと立ち仕事だし。一日中なにかしら焼いたりこねたり切り分けたりの仕事があるし。けっこうガッツがいります。
若いうちはいいかもしれないけど、歳とってくるとだんだん限界を感じてくるかもしれない…。
・土日に仕事しなきゃいけないことが非常に多い
パン屋って土日がいちばんお客さん来るんですよ。なのでイベントとか出たいときはお休みを申請しなきゃいけないです。
・人間的に相性が合わないことがある
職人さんが経営してらっしゃる職場なので、どうしても「合わない」事態も発生します。
絵描きも職人みたいなもんだから… 職人VS職人になっちゃうの
そうすると「めちゃくちゃ相性が合う」ときと逆に「まっっっっったく相性が合わない」ときがある…
こればっかりは仕方ないと思います 自分をうまく抑えられていたら今頃普通に…もっと別の安定した職できてますよ…(一時的に抑えるのはできるけどず〜っと同じ場所に勤めてるとだんだんボロがでてくるやつ)
あと 経験上 職人タイプの経営者は 作るのは得意なのに販売戦略(宣伝とか営業とか)が不得意とか そういうのがよくある
不得意なところを補い合えていけたら理想なんですが、土台に人間関係の良さと信頼がないとサポートも何も務まらないので…。
「良いものを作る職場だけど、自分には合わないな」と感じたら、ストレスが溜まって行動できなくなってしまう前に退散するのが吉です。
・薄給
これっっっはもうほんっっと仕方ない 仕方ないところがある
パン屋、基本儲からないんですよ。職人魂とファンの熱意の精神で成り立ってます。同人活動に近いんですよ。性質的に。
薄給いやだなあ…って思ったら大手のとこに務めるしかないんですが、それだとこう、果たしてひとつひとつのパンに愛情込めて作れるのか…?とか、
経営戦略をみんなでこじんまりと作戦会議したりできるのか…??とか、わたしが好きだったありとあらゆる要素が…そこにあるのか不安で…
結局わたしがパン屋業にどハマりした理由は、個人経営のパン屋業が同人活動に似てたからかもしれません。
薄給でも生きていけたのはイラストレーターもやってたからです。副業でやるくらいがちょうどいい職だと思っている。
ここまで書いてデメリットのほうがけっこう切実な気がしてきましたが、総合すると苦労したけど楽しかった職場でした。
楽しかったって過去形で書いちゃうのは、そろそろパン屋業生活から卒業しよっかな…って思ってるとこだからです。
絵の仕事は変わらず続けたいんですが、副業の方はもうちょっといろんな道を模索してみよっかなって。
いろんな物語を描きたいから、いろんな経験をしたいんですよね!!!!!!人生は一度きりやん。あれこれやってみますよ。
最後にまとめでこうやって記録にできてよかった。お付き合いくださってありがとうございました。
(こんな潔いこと言っといて数年後またパン屋に戻ってたら笑うんだけど 身体を張ったギャグになってしまうな)
おまけ。好きなパン屋に巡り合ったきっかけみたいなの。
前回の、最初の就職を失敗して鬱になった話の続きで、病気の療養期間中にお母さんが買ってきてくれたパンがすご〜〜〜く美味しかったんです。
忘れもしないぜ。ペイザンの「季節野菜のフォカッチャ」でした。あのね。すごく美味しいの。今でも定期的に食べたくなる。
はぁーーーーこの世にはこんな美味しいパンあんの??ちょっと出かけてみるか…ってそのパン屋に行ってみたんですよね。そしたら求人募集が目に付いたんです。
人間不審に陥って、働くなんて絶対したくないって思ってたわたしが、まさかそのパンの生産に携わることになるなんて、5年前のわたしは予想だにしてなかったわよ。これはわたしの描いたフォカッチャの絵です…まさかの…仕事で描かせて頂いたやつ…
もしも今のわたしが、前向きな人に見えるなら、それはパン屋業を通して人を信じる心を取り戻したから…だと…思ってます
ふふ…恥ずかしいまとめ方になりましたね
社会人になると仕事ばっかりで辛そうだから社会人になりたくないって思ってる学生さんたち いらっしゃると思うんですよ
社会人は学生時代よりも自由度が高いので工夫しだいでどんだけでも自分の生きやすい方向に持っていくことができます 正社員じゃないと生きられないとか、結婚しないと生きられないとかそういうのないから 保障がいっぱいついてて楽は楽なんだけどね…
安定した方が輝く人と、乗り継いでチャレンジし続けるほうが輝く人といる(安定もしたいしチャレンジもしたい!も正解だよ)20代は自分の特性を見極めて作戦を立てる期間だと思っている 30代になったとき自分の時間を生きるためにね
自分に合うものがわかんなかったら、いきなり最高の会社に就くのを目標にするんじゃなくて、「なにか自分に合わない」「どこが自分に合わない?」を探って職を転々としながら軌道修正していけばいいと思う… 安心して心から惹かれるものを追ってほしいよ
好きなものを受け取り探るためのアンテナとレーダーさえ生きていればいいよ!!!どん底にいても立ち上がれるから!!!!