ラバーデビルの恐怖
Added 2020-09-07 20:15:27 +0000 UTCここはオルギア。 自然と魔法が栄え、そして魔を内包する生物が存在する世界。そこでは人間たちがその世界を旅する冒険者を目指して日夜活動を続けている。 俺もそんな冒険者の一人だった。 「うーん、今日はどれにすっかな……」 オルギアの中心に位置する地では、冒険者達の交流場が設けられ、そこには冒険者向けの様々な依頼(クエスト)が紹介されていた。 俺の名前ははガイ。俺も一端の冒険者として様々な依頼をこなしてきた。最近では名前も売れてきてベテラン冒険者としての貫禄も付いてきている。 「ガイさん。それならこれはどうですか?」 別の冒険者が俺に話しかけた。手に依頼内容が書かれた紙を持っている。これのことか。 「新種モンスターの調査か……」 どうやら近隣の森にデータベースにない新種のモンスターが現れたらしい。どうやら詳細な情報をデータベースに入力するための調査を冒険者達に依頼しているようなのだ。 「依頼レベルはBでちょっと危険かも知れませんが、報酬が張るようですよ。一緒に行きませんか、ガイさん!」 「250万ネイか……新種モンスターの調査は危険も伴うからB級にしては少し高めだな……」 それでも、やはり250万ネイという高額の報酬は俺としてはぜひやりたい依頼だ。冒険者と折半するとしても125万。普通の依頼よりは遥かに高い。 最高の冒険者を目指す俺としては、例え報酬がないとしてもどんな依頼をもこなせるようにならなければならない。これは俺がさらに上へとステップアップするための試練だ、とも思えた。 「よし、依頼を受けよう。早速これを受付へ持って行く」 「わかりました! 僕も行きますガイさん!」 「ああ、よろしくな」 「よろしくお願いします!」 こうして俺は、俺を依頼に誘った中堅冒険者のセイルと共にモンスターの調査をすることになったのだ。 ◆ 次の日。 俺はセイルと共に件の森へやって来ていた。木の葉が鮮やかな緑色に染まり森林浴でもしたくなるような美麗さだったが、ここに現れたらしき新種のモンスターの調査のためにここに来たのだ。今は自然と戯れている時間はない。 「じゃあ俺はそっちを探します」 「ああ」 俺は二手に分かれてモンスターを探すことにした。 情報によればそれは黒色のスライムのようなモンスターで、森の中をずるずると這いずり回っているらしい。 そのモンスターの発見と同時にその森には悪魔系モンスターの出現が増えたらしいが、そのモンスターが悪魔を引き寄せるフェロモンでも持っているのだろうか。 「キー!」 「モンスターか!」 早速悪魔系の下級モンスターが襲ってきた。モンスターには温厚な種族もいれば好戦的な種族もいる。悪魔系は基本的に好戦的なので、武装で対抗しなければ最悪命の危険もあるモンスターだ。下級程度なら油断しなければほぼ大丈夫だが。 「どけ!」 「ギィ!」 俺は手に持った武器でモンスターを昏倒させる。魔力も少なく力も弱いためあっさりと退けることができた。 「さて……」 俺はしばらく森を歩き続けていたが、その大半が獣系か虫系。たまに悪魔系が現れる程度のもので、そのモンスターはどれもデータベースに既に記載されているありふれた種族ばかりだった。 「ここまで探してまだいないか……セイルが先に見つけてればそれでいいんだが」 本当はそんなモンスターなんていないんじゃないのか? 俺の中にそんな疑問が浮かんだ時、茂みからカサカサと何かが蠢く音がした。 「……なんだこれは」 ふとその音がした方向を見る。するとそこには黒い色をしたドロドロの液体が蠢いていた。それはまるでスライム系のようでいて、しかしそうじゃないような謎の不気味さを醸し出していた。 「……これか、新種のモンスターってのは?」 俺は静かに“それ”に近づき、武器越しにそのスライムに触れてみる。流動性のある体にも関わらず弾力があり、俺の武器の干渉に対してクニクニと反発していた。 「それにしてもやけに変な体だな……ゴムみたいというか……」 近い材質を挙げるならば、ゴムだろうか。液体のゴムのようなそのスライムは、まさしく新種と呼べるものだろう。 仮に俺が名を付けるならば、『ラバースライム』だろうか? 「とにかくこのモンスターを捕獲しないとな……」 俺は小型の捕獲箱を取り出すと、そのスライムを捕まえようと手を伸ばす。 この時、俺がもっと慎重に行動していれば――あんなことにはならなかったのだろうか。 「うわっ!?」 手を触れた途端、スライムが俺に向かって襲いかかってくるのがわかった。しかし、抵抗できなかった。スライムが素早く、ずるずると俺の体を這いずり回ってあっという間に侵食していったからだ。 「くっ、まずい! 離れろ!」 身体中にゴムのようなものが纏わりついてくるような奇妙な感覚を俺は感じた。 「んっ、うわああああああっ!」 必死に振りほどこうとするも、ラバースライムは離れるどころかどんどん俺の体を侵食する。そのまま俺は全身をその黒いラバーで覆われてしまった。 「なっ、なんだこいつ……一体俺をどうするつもりだ……」 スライムは俺の全身に貼り付いてはなれなくなった。体のラインにぴったりとフィットし覆うその感覚は、まるで全身タイツを着させられたかのようだった。 「ううっ!」 俺はつい呻き出してしまう。スライムが俺の体に貼り付いたまま小刻みに動き始めたからだ。全身がくまなく刺激されるその感覚に、俺は快感すら感じていた。 下半身にぶら下がる、今はスライムの中の俺の逸物が快感に反応して鎌首をもたげ始めた。 「おっ、俺のチン……やめろっ、こんな場所で!」 俺は森の中で一人逸物を勃起させているその状況にひどい羞恥心をおぼえた。しかもスライムに全身を犯されたままなすすべなく無理矢理に快感を引き出されているのだ。恥ずかしくないわけがなかった。 「くっ、くそ……ダメだ、ヤバい……イッちまいそう、だっ……!」 未だに刺激を続けるスライムに、俺の精巣は今にも子種を捧げようとしている。こんな場所でモンスターに射精させられるなんてまっぴらごめんだった。本当ならこんなこと絶対にしたくなかった。だが本能には抗えなかった。 「うああああっ!」 俺は声を上げて射精した。スライム越しに勃起した逸物からびゅるりと真っ白な精液が飛び出した。その量はいつもの二倍近くあった。 「イッちまった……まさか、俺が……あっ!?」 その瞬間、俺の身にありえない変化が起き始めた。目線が段々と低くなっていったのだ。ふと自分の手を見ると、少しずつその手が小さく短くなっているのがわかった。 「なっ……!?」 俺の体が縮んでいるのだ。毎日冒険のために鍛えていた筋肉が消えていく。スライムで黒く染まった俺の手が子供じみた可愛らしいものになっていく光景が、俺はとても怖かった。 「体が縮んでっ……この体、まるで昔んときみたいなっ……あっ!」 俺はまた全身にとめどなく気持ち良さを感じていた。肉体の急激な変化に戸惑っていた隙をスライムに突かれてしまったのだ。堪えきれずまた逸物が望まぬ吐精を行った。 「またこんなに……うおっ!?」 再び俺の体が縮み始めた。どうやら射精が変化のトリガーになっているらしく、肉体が十年以上前のそれへと逆行を始める。 いや、まるで、精液とともに年齢まで俺の中から抜け出てしまっているようにも見えた。量が多いのも俺の人生そのものを精液に混ぜ込んでいるからと考えれば説明がついた。考えたくもなかったが。 「こんな体じゃ……もう冒険なんか……おおう!」 不意を突かれて再び射精してしまい、つい奇声をあげてしまう。俺の体は再三縮み、物心ついて間もなかった頃の幼い体躯へと逆戻りしてしまっていた。この体じゃもう冒険はできないだろう。 俺は今まで全てを冒険者に掛けてきた自分の人生を台無しにされたような気分になった。 「あぁ……誰かぁ! このスライムを剥がしてくれぇ! 俺はもう若返りたくない!」 すっかり甲高くなってしまった声で叫ぶ。しかし誰も俺は助けてくれなかった。そんな俺をさらにスライムは追い詰める。 「うがああぁ!」 再び四度目の射精をした。すると背中から勢いよく翼が音を立てて飛び出した。間髪入れず尻尾が尾骶骨の辺りから飛び出す。その黒い翼と尾は悪魔系のそれと瓜二つだった。 「あぁ……これっ、悪魔の……俺、悪魔になっていってるのか! そんなの嘘だ! ありえない! 人間がモンスターになるなんて、そんな現象歴史には!」 しかし、新しく生えた器官の重みでそれは幻覚でも妄想でもなんでもないことを実感させられる。スライムに覆われていない首から上は以前の俺そのままだったのが余計にアンバランスで、いつしかその頭部も変わってしまうのだと思うと俺は恐怖で震えた。 「うあぁぁ……いやだ……俺は伝説の冒険者になるんだ……モンスターになんかなりたくねぇよ……」 その風貌からして悪魔になったとしても下級悪魔だろうということが推測できた。冒険者としていつも見てきたその姿そのままだったからだ。 せめて、分かれてこいつを探しているセイルが俺を見つけてくれれば、くれれば…… 「んんっ!」 逸物から精液が飛び出す。気がつくと俺は、何故この森に来たのかが分からなくなってしまっていた。大切な何かを探しにここへ来たはずなのに、俺の中からそれだけがすっぽりと抜け落ちてしまったかのようだった。 「まさかっ、次は俺の記憶が!? ああっ!」 また射精してしまった。俺はどんどん依頼をこなして偉大な冒険者になりたかっただけなのに。まだ冒険者になったばかりで何故こんなことにならなければならないのだろうか? ……いや、違う! 俺の冒険者になった後の記憶が消えてしまっているんだ! この森でスライムに射精させられて悪魔にされていることはちゃんと覚えているのに、それ以外の、俺自身に纏わる記憶が次々と失われている。このままじゃ、俺は冒険者としての記憶まで―― 「うわああぁ! もう嫌だぁ! やっぱり冒険者なんかにならなけりゃよかっ……ああああ!」 ……俺は何を目指したかったんだ? 夢が俺の中から失われた。俺の中の記憶はもう訓練所を卒業した頃の記憶しか残っていなかった。 それって、何の訓練所だったんだ? 「やだ……もう出ないで、出たら忘れちまう……あぁっ!」 俺、もうほとんど忘れちまった。だって、訓練所の記憶がもうないんだから。 訓練所って何だったっけ。俺はまだ行ってないはずなのに。いや、それも忘れちまったんだ。 次射精したら、きっと俺は俺じゃなくなる。だって俺が俺になったのはこの頃だったから。その記憶まで消えちまったらきっともう俺は……気持ちいい! おちんちんからまた白いのぴゅっぴゅってしちゃった。あれ、ぼく何してたんだっけ。この黒いのはなに? なんでぼくしっぽ生えてるの? 「うぅ、ぼく一体どうしちゃったの?」 ぼくの頭をさわる。ツノが生えてる。口にはとがった歯が生えてる。顔まであくまになっちゃってる。ぼくは白いのが出るたびに頭の中がなくなっちゃってる。ぼく頭までこどもになっちゃった。なっちゃった? ぼくこどもだよね? あれ? しっぽをさわると頭がびりびりってしてきもちいい。おちんちんにミミズみたいなものが何本も出てくるとまた白いのが出た。 あれ? ぼくのおなまえなんだったっけ。ぼくはぼくだもん。そんなのわからないよ。 でもそんなのべつにどうでもよくなるくらいにきもちいい。おちんちんからまだ白いのが出てる。それでまたあたまからぼくがきえて、ぼくってなんだったっけ? 「ここどこぉ? ぼくだれぇ? むぐっ!」 くびまでしかなかったくろいのが、ぼくのかおにもくる。そして、ぼくはあくまになる。あくまってなに? 悪魔は悪魔だ。 きみはだれ? オレはオマエだ。 おまえ? そう。オマエはオレなんだ。 ちがうよ。ぼくはぼくだよ。 ウルセェぞ残りカスのくせに。俺の頭の中からさっさと出てけよ。 いやだよ。ぼく、でたくない! なんかぼくのなかにちがうのがはいってくるよ! 残りカスはさっさとザーメンになって、記憶をオレのもんで埋めちまいたいんだよ。せっかく手に入れたカラダ、早く使いたいからな。 ぼく……ぼく……うあぁ…… よしよし、素体の精神がキンタマに移動してくのを感じるぜ……オレは知能が高くて助かったぜ。仲間の中には知能が低くてテメエの精神まで消えちまったのもいるからよ。 う、あ……き、も…… オレも早くカラダが欲しかったからな。なんか知らねえけどオレら目当てで近づいてくる冒険者がいっぱいいるからな。オレらからしたらカモだぜ。 ……よ……ら………… そろそろ出すか。じゃあなオレの前の宿主! 「アアアアアアァ!」 オレのチンポからザーメンと一緒に宿主の最期の精神が飛び出した。今までの中でも一番多かったな。根源の方はさすがに量も臭いもすさまじいぜ。 「へへ……まさかオレが人間の体を乗っ取るタイプのモンスターだとは分からなかったようだな……こーんなザーメンになっちまって哀れなもんだなァ?」 オレは宿主だったザーメンを掬って舐め取る。土とザーメンの苦さが口の中に広がった。 「人間の精神が入ったザーメンは格別だな……ゾクゾクしてきたぜ。ん?」 オレの前に一匹の同族が現れた。どうやらそいつも“出来立て”のようで、チンポをギンギンにおっ立たせながらザーメンを垂れ流している。 「へぇ、オマエもなったばっかか?」 「おう。じゃ、早速悦しいコトしようぜ!」 「ん……はあっ! オマエ、うまっ、やばっ、出る! もう出そうだぜ!」 「まだイクんじゃねーぞ。オレも少しは悦しみたいからな……」 こうしてオレは新しく生まれる仲間たちと、この森でただ楽しく狩りとセックス三昧の生活を始めるのだった。 ◆ 『報告書:新種モンスターについて』 『ラバーデビル』 『このモンスターは一見黒いスライムのように見えるが、それ間違いである』 『その体はゴムとほぼ同様の材質でできており、人間の体に取り付き寄生する』 『寄生された人間は例外なく全身をスライムで覆われてしまった。全身が寄生されてしまった場合、自力で引き剥がすのはほぼ不可能である』 『実験の結果、このスライム状の素材は宿主の快感を促し射精させることが明らかとなった』 『ラバーデビルは宿主に魔力を注ぎ込んでいるらしく、その魔力は精液の中に宿主本来の遺伝子情報を移してしまう』 『射精した人間は、肉体の退行から始まり、人間性の消失、肉体の悪魔化、記憶の喪失と続く』 『宿主の記憶・知能が幼児程度まで退行すると、ラバーデビルの精神が脳を侵食し精神を支配する』 『その後、寄生された人間は例外なく悪魔系モンスターとして転生した。どうやらスライム状の姿の時点で自我はあるらしく、変化後はその自我が引き継がれる模様』 『変化した元人間の悪魔は知能が高いパターンと低いパターンがあり、後者は無差別に人を襲うので非常に危険』 『前者の場合、ほぼ仲間と共に性行為を行うか他のモンスターと戦う場合が多く、ほぼ無害である。しかし性行為の邪魔をすると襲いかかってくるので注意が必要』 『肉体はスライム体及び悪魔体ともにゴム質で出来ており斬撃を受け付けないが、火炎魔法に非常に弱い』 『冒険者はスライム状のラバーデビルを見かけても倒そうとせず即座に逃げるのを推奨する』 『少しでも触れた場合、同伴者にラバーデビルを引き剥がしてもらう事。ただし引き剥がした側が寄生される可能性があるので引き剥がした瞬間に火で撃退する必要がある』 『人間をモンスター化する非常に貴重でなおかつ危険な種族のため、現在は政府の保護対象とする』 『以上、この研究データと及び寄生された被害者のパターンデータをデータベースに保存する』