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茶柱たべたべ
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【支援者限定】ユウリと青年が出会うだけの話

 ユウリと出会ったのは、昨年のことである。  その時の彼女は13歳で、ハロンタウンにてブリーダーの母と一緒に住んでいた。  何でも数年前にヨロイ島から引っ越してきたらしく、以来、母の仕事を手伝って暮らしていたそうだ。  手持ちは、コジョンド一匹。  幼い頃からの、友達だという。  ジムチャレンジ歴はない。  ヨロイ島ではかなり田舎の方で暮らしており、招待状が届かなかったようだ。  ハロンタウンに越してきてからも、家族の手伝い最優先で、ポケモンバトルの世界にはとんと縁がなかったらしい。    さて。  ご存じの通り、ハロンタウンは前ガラルチャンピオンのダンデ、現ガラルチャンピオンのマサルの故郷として、有名である。  そのせいか、現在では数多くのトレーナーがここを訪れる。  王者の故郷を見てみたいというツアー客が、9割。  チャンピオンを育てた土地で特訓すれば、より高みへといけるかもしれないと考える浅はかなトレーナーが、1割。  青年は、後者だった。  今までいろんな地方を旅してきて、それなりの強さは手に入れたが、リーグ優勝の経験は皆無。伸び悩みを打破したいと考え、この牧場の町にやってきたのだ。  結論から言えば、ハロンタウンの野生ポケモンはかなり弱く、中堅トレーナーの特訓場所としては不向きだった。  だから、一番道路から飛び出すホシガリスやココガラを適度にいなしつつ、ワイルドエリアの方にでも行こうと考えていた時。  彼は、草むらでユウリと出会った。  彼女は、ウール―に襲われていた。  後から聞いた話によると、虫よけスプレーを使い忘れたらしい。  だから、近場のフレンドリィショップに行こうとした際、野生のポケモンと出くわし、泡を食っていたそうだ。  青年は相棒のラッタに指示を出し、何とかウール―を退散させた後、ユウリを家に送り届けた。  その道中、彼女の手持ちであるコジョンドを見せてもらった。  性別はメスで、ポケモンバトルの経験もないようだった。  なのに、そのコジョンドは既に、一線級の能力を持っていた。  からくりはこうだ。  何でもユウリはブリーダーの母を持つ関係上、昔から育成にまつわる本を数多く読んできたらしい。  その関係で、ポケモンの能力を高めるための運動や料理にまつわる知識が、物心つく頃には自然とインプットされていたのだという。  そこに来て、ユウリは見知った情報を試したいタイプの少女だった。  幼い頃から一緒にいたコジョンドは――その頃はまだコジョフーだったらしいが――ユウリ考案の努力値アップエクササイズや経験値アップカレーライスに付き合わされた。  結果、一度もバトルを経験していないにもかかわらず、他地方の四天王にすら通用しそうな怪物が誕生していた。  青年は、ユウリにジムチャレンジしてみないか尋ねた。  彼の目から見て、彼女の才能は明らかに自分を越えていた。  これほどの逸材が、バトルの世界を一度も味わうことなく生涯を終えるのは、損失だと思った。 「で、でも私……推薦状も、貰ったことないし……」  ユウリはおずおずと言った。  その台詞は、暗に「推薦状さえあれば、ジムチャレンジの旅に出てみたい」と物語っていた。  だから、青年は彼女のために一肌脱いだ。  幸いにも、彼はこれまでの長い旅路の中で、それなりに人脈を築いていた。  そこで知り合ったガラルのジムリーダーに口利きして、どうにかこうにか推薦状を貰い、ユウリに渡した。  彼女はポカンとして、でも、次の瞬間には目を輝かせていた。  それからの快進撃ときたら、前代未聞だった。  ほぼ一ヶ月で、彼女はほとんどのジムをクリアしていた。  ユウリのコジョンドは攻撃力と機動力共に並外れており、相手の技はほとんど当たらず、代わりにこちらの『とびひざげり』はことごとく急所に当たった。  仮にダメージを負っても、特性『さいせいりょく』を生かした『とんぼがえり』を一回か二回挟むだけで、相手は気絶し、コジョンドは全快した。  また、彼女の育成スキルは期待以上で、コジョンド以外のパーティーメンバーも粒ぞろいだった。  『てっぺき』と『はねやすめ』のコンボで要塞と化すアーマーガアに、『りゅうのまい』を積んだが最後ラスト一匹まで蹂躙するギャラドス。  エルフーンが搦手で翻弄すれば、キュウコンは火力で焼き尽くす。  その他にも多種多様のポケモンを、随時鍛え上げながら、状況に応じて使い分けた。  ユウリはポケモンバトルの才覚も桁外れで、凡人では思いもつかない奇策を講じ、数々の強敵を瞬く間に打ち破ってきた。  その中には、青年も含まれていた。  彼はユウリが三番目のジムをクリアした辺りで、追い越されていた。    それまでは旅の知識などを駆使して、辛うじて彼女に先輩風を吹かせられたが、もう無理だった。  あらゆる才能が違った。  トレーナーとしてのスキルが頭打ちの青年に対し、ユウリは成長の余地を無限に感じさせた。  これ以上一緒にいても、教えてやれることはない。  青年は別れようとした。  でも、ユウリはそれを嫌がった。 「一緒にいてよ。旅の終わりまで」  綺麗なダークブラウンの瞳が、今にも泣きそうなぐらい潤んでいた。  彼女はその時、14歳になったばかりだった。  青年が旅に出たのも、そのぐらいの年齢だった。  相棒のコラッタがいたから、完全な孤独という訳ではなかったが、それでも心細かった。  結局、青年はユウリと一緒に旅を続けることにした。  自分では決して届かない若い才能が、常に隣にあるというのは辛かった。  しかし、それでも彼女に悲しい顔をさせたくなかった。  最終決定権はユウリにあったとはいえ、そもそも、彼が誘ったジムチャレンジである。  大人として、この旅の結末を見届ける義務があると思った。  予想外だったのは、その会話があって以降、ユウリのジムチャレンジのペースが、目に見えて落ちたことだ。  もう少しで、バッジを全てゲットして、チャンピオンに挑める。その瀬戸際で、彼女は足踏みしていた。 「今のチャンピオンはさ。前のダンデさんより、強いんだって」  どうして最後のバッジを取りに行かないのか聞いた時、彼女はにっこりと笑って言った。 「だからね。私、もっと強くならなきゃって思ったんだ」  そして、彼女は留まった。  修行の場所として選んだのは、ワイルドエリアだった。。  キャンプ。買い出し。キャンプ。キャンプ。買い出し。風呂。キャンプ。  二人だった。  青年はユウリと共に、何度も同じテントで寝泊まりした。  恋人関係でもない若い男女が、隣り合って眠る。  文字に起こせば不純だが、しかし、ユウリとは何もなかった。  当然だ。十歳近く齢が離れているのだし。  彼らは旅の仲間として、師弟として、友人として、いくつもの夜を共に迎え、見送った。   「ねえ、お兄さん」  ある晩、ユウリは寝袋から半身を出すようにして、青年に言った。   「お兄さんはさ。私のジムチャレンジが終わったら、どうするの?」  少し考えて、故郷に戻るつもりだと、答えた。  チャンピオンの夢は果たせない。  隣にいる天才に、現実の苦さを教わった。 「……ガラルに残る気はないの?」  ない、と答えた。  ここにはユウリをはじめ、大切な友人が何人もいる。  でも、それは他の地方も同じだった。  同じぐらい大切な友人たちを残して、別の土地に移って、また離れる。  その繰り返しで成り立っている旅だった。  でも、故郷には家族がいる。  家族は、土地に戻る理由になる。  友人は、土地に残る理由にはならない。  だから、帰る。 「ここに、家族を作ったらいいのに」  少し考えて、笑った。  恋人もいないのに、無理だと答えた。  今までの旅がそうであったように、青年はガラルでも独り身だった。  もっとも、だからこそユウリと旅ができた訳だが。 「……そっか。……分かった」  ユウリは寂しげに微笑んで、頷いた。  青年はそれから一言二言交わして、眠った。  彼女はその寝顔を、じっと見ていた。 「……………………」  じぃっ……と、見つめていた。  

Comments

なんかじんわり来るなぁ...

東方野郎


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